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2012年、世界経済の不均衡続く

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2012年1月4日(水)

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欧州も米国も日本も中国も、景気回復が困難な状況にある。財政赤字、経常収支の不均衡は解消されず、貿易戦争に発展する恐れも。金融政策も財政政策も手詰まりで、荒れる1年を覚悟しなければならない。

ノリエリ・ルービニ氏
ニューヨーク大学スターンビジネススクール教授。経済分析を専門とするRGEモニターの会長も務める。米住宅バブルの崩壊や金融危機の到来を数年前から予測したことで知られる。

 2012年の世界経済の見通しはクリアだ。しかしそれは、決して素晴らしい見通しではない。欧州では景気後退、米国ではせいぜいわずかなプラス成長、中国をはじめとする大半の新興国では景気に急ブレーキがかかる。

 ラテンアメリカ諸国は(中国や先進国の景気減速による)コモディティー価格下落の影響を受ける。中欧、東欧はユーロ圏のリスクにさらされる。

 中東の混乱も、中東のみならず世界中の経済に深刻なリスクをもたらす。中東の地政学的リスクは依然として高い。高止まりした原油価格が世界の成長を抑え込む。

先進国、中国ともに困難な年に

 現時点でユーロ圏の景気後退は確実と言える。後退の程度と期間は予測できないが、継続する信用収縮とソブリン債問題、競争力の欠如、緊縮財政が重なる以上、深刻な景気下降局面に至ることはまず間違いない。

 2010年以降、米国は微々たる成長を続けてきた。その米国も、ユーロ圏の危機のため、より大きなリスクに直面している。それ以外にも米国は、景気に大きく歯止めをかけている財政問題、住宅分野で進行中の負債圧縮プロセス(しかも雇用も所得も伸びず、不動産と金融資産に下げ圧力がかかる中で進めなければならない)、拡大する不平等、政治の行き詰まりといった課題を抱える。

 その他の主要先進国では、英国が、財政再建の前倒しとユーロ圏の破綻状況のせいで成長が損なわれ、二番底にはまりつつある。日本は、非力な政府が構造改革を実施できずにいるため、震災後の経済復興が頓挫するだろう。



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 一方で、中国の成長モデルの欠陥も明らかになりつつある。不動産価格の下落をきっかけに連鎖反応が起こり、デベロッパー、投資、そして政府の歳入へと悪影響が及んでいく。中国の建設ブームは一段落する。同時に、米国や、何よりユーロ圏の需要の落ち込みにより純輸出が停滞し、成長の足を引っ張る。不動産価格の高騰を抑えて市場の沈静化に努めてきた中国政府が経済を再び成長路線に乗せることは、容易ではないだろう。

遅れる改革、解消されない不均衡

 中国だけではない。政策面で言えば、米国も欧州も日本も、持続可能で均衡の取れた成長を回復するために必要な経済、財政、金融の抜本改革を先延ばしにしてきた点は同じだ。

 先進国では民間、公的部門とも負債の圧縮にほとんど手をつけられていない。家計も金融機関も政府や自治体も、バランスシートの不均衡を解消できずにいる。

 唯一、優良企業のバランスシートだけが改善している。しかしそうした企業も、資本支出や新規雇用をいまだに再開していない。後を絶たないリスクと不透明感が、最終需要を抑えているからだ。生産能力が依然として大きすぎることも背景にある。近年は、中国が製造設備への投資を急拡大させた。さらに、多くの国で不動産投資が過剰に行われた。

 企業のリストラも一因となり、不平等が拡大している。家計の方が企業より、貧困層の方が富裕層より、そして労働者の方が資本家より限界支出性向が高いため、不平等の拡大は総需要の縮小をさらに推し進める。加えて、不平等が拡大すると抗議運動が世界中で活発化するため、社会不安や政情不安が経済的リスクを高める恐れがある。

 一方、経常収支の不均衡も、米国~中国(及び新興国)間と、ユーロ圏の中核国~周縁国間という重要な経済関係において、拡大したままだ。

 調整を整然と進めるなら、経常赤字が大きく支出が過剰な国は内需を抑制する必要がある。名目及び実質通貨価値を切り下げて貿易収支を改善しなければならない。一方、経常黒字が過剰な国は内需、特に消費を促進する必要がある。名目及び実質の通貨価値を切り上げて、貿易黒字を抑えなければならない。



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 しかし、黒字国は通貨価値の切り上げに抵抗し、赤字国にデフレ不況を押しつけようとするため、為替相場によるこの種の調整は行き詰まる。その結果、為替介入、量的緩和、資本流入規制といった様々な形で通貨紛争が発生する。2012年には、世界の成長がさらに鈍化する中で、こうした通貨紛争が貿易戦争へとエスカレートする危険がある。

金融、財政政策ともに手詰まり

 政策立案者の手持ちのカードは尽きかけている。通貨価値の引き下げはゼロサムゲームだ。すべての国が揃って通貨を切り下げて一斉に純輸出を拡大することはできない。先進国ではインフレが問題ではなくなっているため(新興国でもインフレ問題が比較的小さいため)金融緩和政策を取るだろう。しかし先進国における金融政策は次第に実効性を失ってきている。問題の根源が流動性ではなく支払い能力、つまりは信用力にあるからだ。

 一方、財政政策は、増大する赤字と債務、欧州の新財政規則などのため、身動きが取れなくなっている。金融機関を支援し救済するやり方は政治的に嫌われる。支払い不能に近い政府にはそうする資金もない。そして政治的には、20カ国・地域(G20)がした約束は、主要国が存在しない「Gゼロ」という現実の前に力を持たなかった。先進国と新興国が、世界観と目的と利益において対立するため、弱い国の政府が国際的な協調政策を実施することが次第に困難になっている。

荒れる1年、覚悟を決めて臨め

 ストックの不均衡(家計と金融機関と政府の巨額の債務超過)が実は支払い能力の問題であるのに、資金調達と流動性の問題として対処していると、痛みを伴う、場合によっては無秩序な再編に至りかねない。

 また、脆弱な競争力と経常収支の不均衡に対処するには通貨の調整が不可欠だ。しかし、これを実行すれば、一部の加盟国がユーロ圏から離脱する可能性がある。

 力強い成長を回復するのはただでさえ難しい課題だ。債務圧縮という亡霊につきまとわれ、政策的な手段も尽きかけているとなれば、それはなおさらだ。しかし、脆弱で不均衡な世界経済が2012年に直面するのは、まさに、これらの課題なのである。ベティ・ディヴィス主演の映画「イヴの総て」の台詞を借りるなら、こう言えるだろう。

 「シートベルトを締めて。来年は荒れるわよ!」